はじめに
2023年10月に開始された日本の適格請求書等保存方式(インボイス制度)は、いよいよ重要な転換点を迎えようとしています。
令和8年度税制改正により、免税事業者など適格請求書発行事業者として登録していない仕入先との取引に関する仕入税額控除の経過措置が見直されました。
当初は2026年10月1日から控除可能割合が50%へ引き下げられる予定でしたが、改正後は70%に変更され、経過措置の適用期間もさらに2年間延長されることになります。
ERPを利用する企業にとって、これは単なる税務上の変更ではありません。SAP、NetSuite、Microsoft Dynamics 365など、どのERPを利用している場合でも、システム全体に影響を及ぼす重要な変更です。
なぜなら、この改正は税コードの設定だけでなく、総勘定元帳(GL)の処理ロジック、仕入先マスターデータの管理、さらには請求書の保存・管理ルールにまで関わるためです。適切に対応できていなければ、税額計算の誤りや監査対応上のリスクにもつながりかねません。
今回は、次のポイントから見ていきましょう
- 2026年10月のインボイス制度改正で何が変わるのか
- 2031年までの仕入税額控除の経過措置ロードマップ
- 財務部門とIT部門が確認すべき4つの重要なERPチェックポイント
- 企業が取り組むべき実践的なステップ別アクションプラン
- なぜERPパートナー選びが重要なのか。Sysamicが提供する支援とは
2026年10月1日何が変わる
2023年のインボイス制度開始以降、適格請求書発行事業者として登録されていない仕入先との取引についても、一定割合の仕入税額控除が認められてきました。
現在の控除率は80%ですが、この経過措置は2026年9月30日で終了します。
その後の控除率は、令和8年度税制改正により以下のように段階的に引き下げられる予定です。
仕入税額控除の経過措置スケジュール
・2026年9月30日まで: 80%控除
・2026年10月~2028年9月: 70%控除
・2028年10月~2030年9月: 50%控除
・2030年10月~2031年9月: 30%控除
・2031年10月以降: 控除なし(0%)
当初は2026年10月から50%へ引き下げられる予定でしたが、税制改正により70%へ変更されました。これは、サプライチェーンへの影響を抑えながら、段階的にコンプライアンス強化を進めるという政府の方針を反映したものです。
しかし、多くの企業にとって本当の課題は制度そのものではなく、それを支えるシステム対応にあります。
多くの財務部門は、自社のERPに設定されている税率テーブルはすでに最新の状態だと考えています。しかし実際には、2023年の制度開始時に想定されていた「50%ルール」がそのまま設定されているケースも少なくありません。そのため、2026年10月1日以降に処理される請求書については、事前に設定を見直しておかなければ税額計算に誤りが生じる可能性があります。
2026年10月までに確認したい4つの重要なERPチェックポイント
2026年10月の制度変更に向けて、IT部門と財務部門はERPの4つの重要な機能を事前に確認しておく必要があります。
1つ目は、税コード設定の見直しです。
買掛金管理や調達管理のモジュールでは、適格請求書発行事業者として登録されている仕入先と、未登録の仕入先を適切に区別できなければなりません。登録事業者は13桁の法人番号(T番号)に基づいて仕入税額控除の対象となる一方、未登録事業者については経過措置に対応した専用の税区分が必要です。2026年10月以降は、標準税率10%のうち70%を仕入税額控除として処理し、残り30%を費用として計上できるよう設定されているかを確認する必要があります。
2つ目は、マスターデータ管理とT番号の自動検証です。
取引先ごとの登録状況を人手で確認し続けるのは現実的ではありません。そのため、ERPや連携するOCRソリューションが国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトと照合し、T番号の有効性を自動で確認できることが重要です。T番号が未登録または無効だった場合には、70%控除の処理を自動的に適用できる仕組みが求められます。
3つ目は、帳簿への記載要件への対応です。
国税庁は経過措置を適用した取引について、その旨を帳簿上で確認できる状態を求めています。そのため、仕訳作成時に経過措置の適用を示す注記やフラグを自動的に記録できるかを確認しておく必要があります。
4つ目は、Peppol JP PINTと電子帳簿保存法への対応です。
電子インボイスの利用は現時点では義務ではありませんが、大手企業を中心に導入が進んでおり、取引先から対応を求められるケースも増えています。また、電子帳簿保存法では、紙での保管ではなく、検索可能かつ改ざん防止措置が施された形での電子保存が求められます。ERPがこれらの要件に対応できているかを確認しておくことが重要です。
ステップ別アクションプラン
期限までの時間が限られている企業は、次の4つのステップに沿って対応を進めることをおすすめします。
まず、ERPのレポート機能を活用し、仕入先データを抽出します。
適格請求書発行事業者として登録されていない取引先や、T番号が未登録の取引先を洗い出しましょう。
次に、ERPベンダーへ確認を行います。
Dynamics 365 Business CentralやSAP S/4HANAなどの主要ERPでは、制度改正に対応するためのローカライゼーション更新が必要になる場合があります。9月末直前になって慌てることがないよう、対応スケジュールを事前に確認しておくことが重要です。
3つ目は、総勘定元帳(GL)の設定見直しです。
2026年10月以降は、控除対象外となる30%分を適切に費用計上できるよう、会計処理のルールを確認しておく必要があります。設定が不十分な場合、月次決算時の照合作業が増える原因となりかねません。
最後に、ユーザー受入テスト(UAT)を実施します。
2026年10月1日以降の日付を設定したテスト用請求書を使い、仕入税額控除の計算や仕訳処理、電子保存の仕組みが正しく機能するかを事前に検証しておきましょう。
シスアミックが提供する支援
Sysamicは、日本の会計基準や税制要件に対応したMicrosoft Dynamics 365 Business CentralおよびDynamics 365 Finance & Operationsのローカライゼーションを強みとしています。
消費税設定の最適化をはじめ、適格請求書発行事業者の登録番号(T番号)の検証、日本基準(J-GAAP)に準拠した勘定科目体系の整備、e-Taxとの連携まで、日本企業の実務に即したERP環境の構築に取り組んでいます。
2023年のインボイス制度開始時には、外資系企業の日本法人から国内企業まで、多様な組織の制度対応に携わってきました。現在も、2026年10月の制度改正に向けて、税コード設定の見直しや仕入先マスター管理、総勘定元帳(GL)の処理ルールの整備を進める企業が増えています。
制度改正への対応は、単なる設定変更ではありません。税務要件を満たしながら、日々の業務や月次決算への影響を最小限に抑えることが重要です。Sysamicは、そうした観点から現状の課題を整理し、無理のない対応計画の策定と実行を支援しています。

